210502

何事も経験だ。精神的に成長したんだ。そういった呪文を唱える必要があった。久々に。

詳しく説明すると自他の名誉を傷つけることになるので断片的な描写に留めよう。

ご存じの通り5月2日の東京都は不安定な天気だった。青空のまま雨が降っては止み、強さは時間帯によって様々だった。

せわしなく変化する空模様に合わせてか、人々の話にも一貫性がなかった。

3人組の青年はぼそぼそと呟く。

谷川俊太郎」「詩をよく書く人だ」

またある人が思いついた言葉を口にすれば、通りがかりの誰かが相槌を打った。

いつものことながら、特筆すべきことはない。天国にも地獄にも鏡はないはずだ。

ただ黙っているのは、賢くない人間が賢く装うために最も有効な手段だが、実際のところ賢くないので現実に影響を与えることができず、限りある時間は過ぎてゆくばかりで積み上がるものがない。そう気付いた者から、口を開いたり石を投げたりして、己の無力さを痛感するようになる。彼らの笑いは終わりまで続く。